「啓蟄」とは2023|意味と風習、菰外し、出てくる虫はどんな虫?

啓蟄(けいちつ)とはどんな意味なんでしょう。虫が出てくるって、どんな虫がでてくるの?

何か風習があるのでしょうか。「菰外し」ってニュースで目にしますが。あれと虫にどういう関係が?

ここでは

・啓蟄とは(意味、日にち)
・啓蟄の風習(菰外し)
・啓蟄の候

についてご紹介します。

啓蟄とは

啓蟄は、1年を太陽の高さで24の季節に分けた二十四節気の季節の一つです。

1)意味

冬ごもりをしていた虫が地上にはい出るー広辞苑ー

冬ごもりは冬眠のこと。

冬の間、多くの虫は冬眠しています。しかし、2月終わりから3月に入るとひらひら舞うモンシロチョウを見かけたりするようになります。

江戸時代に作られた「暦便覧」では

「陽気地中にうごき、ちぢまる虫穴をひらき出ればなり」ーWikipediaー

と説明されています。

*地面が暖まって、それまで穴の中で縮こまっていた虫が表に出てくるという意味。

 

南北に細長い日本。虫が出る時期も南ほど早くなります。

 

✔例外

キチョウは冬も成虫の姿で過ごします。冬でも暖かい日にはひらひら舞います。

By Alpsdake (Own work) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

 2)啓蟄の日にち

2022年の啓蟄は
3月5日
(土)
Q旧暦なら、新暦の4月?

旧暦は太陰太陽暦。

日付は月の満ち欠けで決める太陰暦二十四節気太陽暦です。

「旧暦なら、もっと暖かかったはず、虫もたくさん出てきただろう」

…と思ってしまいますが、昔も今も啓蟄は太陽暦なんですね。だから、やっぱり啓蟄は今日3月5日。

*おまけに、2022年の3月5日は旧暦なら2月3日にあたります。もっと寒かったかも。

Q啓蟄の反対は?いつ頃?

虫がはい出る季節(二十四節気)があるなら、虫が冬ごもりするのはなんて言うんでしょう。そしてそれはいつ頃?

啓蟄の反対に虫が冬ごもりに入るのは、「蟄虫杯戸(むしかくれてとをふさぐ)」候

秋分の日の後で9月28日~10月2日ころにあたります。*「候」は二十四節気をさらに細かく分けた季節の区分。

実際に寒い地域では、虫が冬支度に入るんですよ。

 

3)啓蟄の「虫」とは?

今では、虫といえば昆虫ですが、すべての生き物をさして「虫」と言っていた時代がありました。

この啓蟄という季節が中国で決められたのは紀元前。

「虫」は「蟲(むし)」の略字です。

そして「蟲」という言葉はその頃生き物全体をさしていました。うごめく感じですね!

「冬ごもりの虫」には、チョウやミツバチはもちろん、カエルやへび、熊など生き物すべてが含まれていたんですね。

みんな冬には見かけなくなります。

啓蟄の風習

啓蟄の前後には、旧暦二月の初午(稲荷神)のお祭りがあって、赤飯を炊いたりする風習がありました。

でも、啓蟄の日は、農家にとっても特に節目ではなかったようで、風習としての食べ物は残っていません。

薦外し(こもはずし)

ニュースで毎年目にする「菰外し」。

啓蟄には、各地のお城や庭園で、冬の間松の木に巻いていた菰(こも:わらでできたむしろ)を外して燃やします。

冬が終わったなと感じますね。

この菰。木々を寒さから守るために巻かれて、暖かくなったから外すんだと思っていました。

でも、違うんですね!

この風習「菰外し」は、江戸時代から、松の害虫となるマツカレハの幼虫(まつけむし)を、駆除するためのもの。

 

↓これはマツカレハの成虫。ガの仲間です。幼虫は毛虫です…。

By Dabachisato (Own work) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

マツカレハの幼虫は、寒い冬には、寒さを逃れるために松の木に巻いたむしろ(菰:こも)に入り込むと考えられていました。

そこで春先になったら、集まった幼虫を菰ごと燃やして一網打尽にするのが菰外しの目的でした。

ところが21世紀に入って、こもの中には、マツカレハの幼虫よりも、マツカレハの天敵(ヤニサシガメ)の方が、たくさん集まっていることがわかりました。

敵をやっつけるつもりだったのに、実は仲間を退治していたんですね。

もう、皇居などでは菰巻き・菰外しは行っていません。

今、有名なお城や庭園で行われる「菰外し」は、害虫退治というより季節の行事として続けられています。

虫出しの雷

「虫出しの雷」は、立春のあと初めて鳴る雷のこと。春の季語です。

ちょうど啓蟄の頃に鳴ることも多いため、冬眠中の虫が驚いて出て来る雷として「虫出しの雷」と呼ばれるようになりました。

この虫出しの雷(春雷)のあと数日は、暖かい天気なることが多いです。

啓蟄の候

啓蟄は、3月5日だけではありません。

二十四節気での「啓蟄の候」は3月21日の春分の日の前まで15日間ほど続きます。

手紙やメールでの挨拶文に使っても大丈夫。

でもこの時期は「早春の候」を使う方がおすすめです。

やはり啓蟄は虫を連想してしまうので。

「早春」なら、春を楽しみにする気持ちを相手の方と共有できますね。

初候 3/5~3/10頃

蟄虫啓戸(ちっちゅう こを ひらく)
:冬蘢りの虫が出て来る

次候 3/11~3/15

桃始笑(もも はじめて わらう)
:桃の花が咲き始める

*梅の後、桜の前に咲くのが桃。

末候 3/16~3/20菜虫化蝶(なむし ちょうと けす)
:青虫が羽化してモンシロチョウになる

生物季節観測では、

もんしろちょう初見(平年で)

横浜:4月6日
名古屋:3月27日
大阪:3月28日

*東京では生物季節観測の対象になっていませんでした。(気象庁近くにいないため。

 

終わりに

虫たちは光周性。気温だけでなく日の長さによって目覚めが決まります。暖かさ寒さにあまり関わりなく、平年並みに出て来てくれそうです。

・・・実際に、虫やカエルやへびが、冬眠からかえって出てくるのはいつ?春にめざめる虫たち!どこで冬眠、いつ出てくる?

啓蟄を迎えると、もう気持ちは春。嬉しい季節ですが、春は天気が変わりやすい時期でもあります。

お元気でお過ごしください。