「マッチ売りの少女」のあらすじ!格差と革命の時代に

かわいそうな「マッチ売りの少女」。

おばあさんと一緒に天国へ行けてよかったけど、アンデルセンはどうして、こんな悲しいお話を書いたのでしょう?

 

ここでは、「マッチ売りの少女」の簡単なあらすじをまとめて、時代背景やメッセージについて、ご紹介します。

あらすじ

シーン1貧しいマッチ売りの少女

大みそかの夜、雪が降っています。家々からは、ごちそうのいい匂いがしてきます。

マッチ売りの少女は、まだ子ども。みずぼらしい服装で靴もはかず、雪の上をはだしで歩いています。

 

シーン2マッチの光でみた幻

少女は、2軒の家の間にうずくまります。

マッチは一つも売れなくて、このまま家に帰るとお父さんにぶたれてしまいます。それに家だって、同じように寒いのです。

 

マッチをすって、体をあたためようとした少女は、マッチの火の中に幻をみます。

1本目のマッチ

ロウソクの火のようにあたたかくて、まるでストーブの前にいるようでした。

⇒足も温めようと足を伸ばすと、そこでマッチが消えてしまいました。

 

2本目のマッチ

おおみそかのごちそう、焼いたガチョウが、おいしそうな湯気をたてています。

⇒ガチョウは少女の方へやって来るのですが、そこでマッチが消えてしまいました。

 

3本目のマッチ

きれいなクリスマスツリーが見えます。


⇒少女が手をのばすとマッチが消えてしまいました。

 

4本目~残り全部のマッチ

亡くなったおばあさんが立っています。この世でたった一人、少女をかわいがってくれた人でした。

「わたしを連れて行って!」

少女は、おばあさんが消えてしまわないように、全部のマッチをすります。

⇒少女は、おばあさんに抱き上げられて、光と喜びにつつまれて、天へ上がっていきました。

 

シーン3亡くなった少女

家のわきで、うずくまったまま死んでいる少女。

人びとは「この子はあたたまろうとしたんだね」と言います。

でも誰も、少女が見た美しい幻や、光につつまれて天へのぼったことは知りませんでした。

 

背景とメッセージ

アンデルセンは、どうしてこんな悲しい話を書いたのでしょう?

貧しくて、今生きている人からは愛されていなくて、一生懸命マッチを売ろうとするのに誰にも買ってもらえなくて。

最後は、あたたまろうとしたマッチで幻を見て、でも幸せに死んでいったなんて?

 

背景:格差と革命の時代

「マッチ売りの少女」は「1948年革命」の年に出版

「マッチ売りの少女」が出版された1848年は、なんと!

・「共産党宣言」発行byマルクスとエンゲルス
・フランスでは二月革命
・ドイツで三月革命

が起きた年です。

 

この年と翌年には、イタリア、オーストリアなど各国でも革命が起き、総称して「諸国民の春」というそうです。*アラブの春が思い出されますね。

アンデルセンの国、デンマークでも1948年に三月革命が起きています。

 

「1848年革命」ってなに?

有名なフランス革命は、これより60年ほど前の1789年。 平民が「バスティーユ監獄」を襲撃して、マリー・アントワネットがルイ16世とともに、ギロチンに消えました。

これは、ブルジョワ(お金持ちの商人など)が王政を倒す革命でした。

そして、「マッチ売りの少女」が出版された1848年のヨーロッパ各国の革命は、プロレタリアート(労働階級)による革命です。

お金持ちではなく、労働者や農民が、選挙権などの権利を求めて武装蜂起しました。

 

*このころ、日本では?・・・1848年は、江戸時代末期。この5年後にペリーの黒船が来航します。

 

デンマークはとにかく、貧しかった

デンマークは、1813年、敗戦や紙幣乱造などから国家財政が破綻*アンデルセンが8才のときでした。

その後の1820年代も、経済危機がつづきます。

 

そして1845年から1848年、ヨーロッパで大飢饉が起きました。農民の主食だったジャガイモが、病気にやられたのです。この時代、国民の多くは農民。人びとは貧困に苦しみました。

 

「マッチ売りの少女」は、貧困と格差の時代、農民など労働者が権利を求めてたたかう革命の時代に、書かれたお話しなんですね。

 

お母さんへの追悼

アンデルセンは、「マッチ売りの少女」には、亡くなった母親への思いが込められている、と言っています。

アンデルセンを深く愛してくれたお母さんは、彼が28歳のときに亡くなりました。

 

彼女は、ひどく貧しい家庭に育ち、小さいときから物乞いに出されたそうです。また、彼女の父親は、実の親ではありませんでした。

*物乞い(ものごい):お金を恵んでくれるように頼むこと。

親が亡くなって養子にもらわれたり、親せきに育てられたり、直接には血のつながらない親子は、当時はたくさんいたのではないでしょうか。

 

アンデルセンのお母さんにとっても、子ども時代はとてもつらかった。

マッチ売りの少女のように、誰にも愛されていないと感じたり、物乞いをして、誰からもお金をもらえないまま家に帰るのは怖くてたまらなかったことがあったでしょう。

 

アンデルセンは、「つらかったね、お母さん。」「でも大丈夫だよ。」「ありがとう。」といった思いを、お話を通して伝えているのかもしれません。

 

メッセージ
:愛と哀しみ、願いと祝福

お母さんが亡くなって15年後、大飢饉と革命の時期に書かれた「マッチ売りの少女」。

お母さんだけでなく、貧困を生き、亡くなったすべての人たちに、愛と哀しみ願いと祝福をおくるお話だと思います。

 

私たちはどうしても、マッチ売りの少女を助けることはできません。

でも、神さまが助けてくれる、愛するおばあさんが助けてくれるという支えが、読後感を哀しみだけに終わらせず、私たちそれぞれに何かを考えさせてくれるのではないでしょうか。

 

平和でかなり自由で豊かな現代の私たちにも、人生の中で自分ではどうにもできないことってたくさんありますよね。

そのつらさを癒してくれるようにも思います。

 

終わりに

貧しさの中で死に、光につつまれて天国へ向かった「マッチ売りの少女」。

これを読んでから人にはやさしくすることにした、という方もいますし、貧困と社会構造について、考える方もいらっしゃるでしょう。

ただいっしょに悲しむだけでも、心の癒しになる物語です。

 

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