だれでも知っている「人魚姫」。
でも、子どものときに読んだ本は短くしてあったり、アニメや映画の内容も原作とは違うこともあります。
子どもから「人魚姫は、泡になって死んじゃったの?」と聞かれたときなど、
お母さま自身のことばで答えてあげられるように、もともとのお話を確認しておきましょう。
ここでは、アンデルセンの「人魚姫」のあらすじを、簡単にわかりやすくご紹介します。
あらすじ
シーン1 王子さまとの出会い
ー海のお城での暮らし
人魚姫は、海の底のお城に、おばあさま、王であるお父さま、そして5人の姉たちと暮らしていました。
人魚は15歳になると、海を上がって外の世界をみることが許されます。
末っ子の人魚姫は、姉さまたちから聞く外の世界のようすに、あこがれをつのらせていました。
ー王子さまとの出会い
ようやく15歳になった人魚姫。海面に上がった姫は、船の上で誕生パーティをしている美しい王子を見ます。
そこに嵐がきて船は沈み、人魚姫は、遭難した王子を助けて砂浜に寝かせ、誰かが来るのを待って隠れていました。
やがて目を開いた王子は、人魚姫には気づかず、砂浜にやってきた美しい娘に助けられたのだと思ってしまいます。
ー王子さまと不死の魂へのあこがれ
人魚姫は、王子に恋をします。
おばあさまは、姫に「人間と人魚の違い」や「人間になる方法」を教えます。
・人魚は300年生きるけれど、死んだら「海の泡」になる
・人間はすぐに死んでしまうけれど、「不死の魂」があって死んだら天国に行く
・人魚も、人間に深く愛され「結婚の誓い」をすると、魂を分け与えられる
シーン2 海の魔女の家
美しい王子への恋と人間だけが持つ不死の魂へのあこがれ。人魚姫はそのためなら、思い切って何でもやろうと決心します。
そして、おそろしい海の魔女の家へ。
海の魔女は、人魚のしっぽを美しい足に変えるための魔法の薬を与えます。
でも相手は魔女ですから、厳しい魔法の薬のルールがありました。
①いったん人間になると、もう人魚に「戻ることはできない」
②王子が「ほかの女と結婚したら」、人魚姫は翌朝には死んで海の泡になってしまう
③魔法の薬の「見返り」は、人魚姫の美しい声
きれいな足と軽やかな足取りを手に入れた人魚姫ですが、もう話すことはできなくなりました。
シーン3 王子と暮らす人魚姫
魔女からもらった薬で、人間の姿かたちになった人魚姫。浜に流れ着いたところを、王子に見つけられました。
それから、王子は人魚姫を妹のようにかわいがり、姫は幸せな日々を過ごしました。
ただ、王子は自分を助けてくれた(と信じている)少女を忘れられずにいます。
でも、口がきけなくなった人魚姫は、王子に本当のことをうちあけることができません。
王子が人魚姫に求愛することはありませんでした。
シーン4 王子の結婚
親の勧める王女さまに会いに出かけた王子は、その王女が、自分を助けてくれた少女だと知って、結婚を決めます。
人魚姫が、結婚式の翌朝には海の泡になることを知った姉さまたちは、姫に海の魔女からもらった剣を手渡します。
その剣で王子の心臓を刺せば、人魚姫はふたたび人魚にもどることができるのです。でも、姫は、どうしても剣を突き刺すことができませんでした。
シーン5 空気の娘たちと、いずれ天へ
次の朝、死んで海のあわになった人魚姫。でも、お日さまに照らされると、からだが軽くなって空中に浮いていきます。
姫は空気の精の仲間になったのでした。
空気の精になった人魚姫は、王子の妃にキスをして祝福します。
空気の精には、魂を与えられ天国にはいるための「試みの期間」があります。
世界中をめぐって涼しい風をおくったり、人々が幸せになるようないいことをすると、300年後には人間と同じ不死の魂をさずかることができるのです。
人魚姫が、天国に行けるのはいつ?
風になって、いいことをすると、300年で魂を与えられ天国へ。
〇期間を短縮するには
:いい子を見つけると、300年から1年が引かれます。
△期間が長くなるのは
:お行儀の悪い子、いけない子を見ると、1日のびてしまいす。
「人魚姫」の背景とメッセージ
背景
アンデルセンがこの話を書いたのは、自分の片思い真っ最中のとき。
ある女性を深く愛していましたが、自分が彼女より一回りも年上なこと、結婚して家族を養う経済力がないことから、愛を告白することはありませんした。
・・・話せなくなった人魚姫と同じですね。
メッセージ
心に残るメッセージは、読んだ人それぞれで違うもの。でも多分、共通するのは、無私の愛ではないでしょうか。
王子への想いを伝えられずに苦しみ、不滅の魂にあこがれた人魚姫は、神へ近づく道を与えられました。
執着する想いをあきらめて(超えて)、王子の妻となった王女を心から祝福した人魚姫。
うらやましいです。
ここまで想いを昇華する(より高い次元のものに変える)なんて、なかなかできませんよね。
アンデルセンも、「人魚姫」を書くことで、想いを秘めた自分を癒したのでしょうか。
お話を読んだ後では、心が洗われたようで、前よりも少しだけいい人間になる、なりたいと思ったりします。
こんな物語だから、200年近くも愛され読みつがれてきたのでしょうね。
最後の「試みの期間」のルールは、そこだけみると何だか教訓的。でもお話の中で読むと、教訓臭さなんてまったく感じさせないんですよ。
・・・それに、この世で特にいいこともしていない自分も、できれば空気の精か何かになって、3年ほど人のためにいいことをして、天国にいけたらいいな、と思います。
大人の読み直しにおすすめの本
原作に忠実に訳されて、省略がない大人向けの本をご紹介します。
・青空文庫 『人魚のひいさま』
<すぐに無料で読める>
無料で読める青空文庫。楠山正雄(1884~1950)訳。1955年発行(1938-39頃初版)。昔のことばも多いですが、美しい日本語です。
・岩波文庫 『完訳アンデルセン童話集 1 (岩波文庫 赤 740-1)
』
<いちばん美しく引きこまれる>
大畑末吉(1901~1978)訳。大畑さんは、アンデルセンの本を日本で初めてデンマーク語から直訳しました。少し古いですが、引きこまれる美しい訳です。1984年改版。*改訳初版は1963年。
・評論社『あなたの知らないアンデルセン「人魚姫」
』
<単行本、漢字も多めで読みやすい>
長島要一(1946-)訳。コペンハーゲン大学教授。デンマーク語からの直訳です。新しく見つかったアンデルセンの本ということではありません^^2005年発刊の最新の訳です。
↓読み聞かせ向け:アンデルセンのお話いろいろ
↓日本のアニメ(アマゾンプライムで無料のことがあります)
↓ディズニーの創作アニメ。リトルマーメイドの続々編。
リトル・マーメイドIII/はじまりの物語(吹替版)
終わりに
かわいそうな人魚姫。
でも、神さまは、人魚姫の無私の愛を愛でられたのでしょう。最後に救いがあって、読み終わるころには涙です。
「人魚姫」は、かわいくてきれいなおひめさまが主人公ですし、お子さんの豊かな心の成長を助けてくれるおすすめの名作です。
アニメでも絵本でも、いっしょに楽しんで、お母さまのプラスアルファの感想を伝えてあげてください。