こいのぼりの歌は二つあります。
「いらかの波と雲の波」の鯉のぼりの歌は、「屋根より高い」鯉のぼりより、歌詞も曲も難しいですね。
歌詞は、大正時代に作られたので、今は使わない言葉も多くて、聞いていて何のことやらわかりませんw
ここでは、いらかの波で始まる「鯉のぼり」について
・鯉のぼりの由来
・歌い方
などをご紹介します。
歌詞と意味
1歌詞
1
甍(いらか)の波と雲の波
重なる波の中空(なかぞら)を
橘(たちばな)かおる朝風に
高く泳ぐや、鯉のぼり
2
開ける広き其(そ)の口に
舟をも呑(の)まん様(さま)見えて
ゆたかに振(ふる)う尾鰭(おひれ)には
物に動ぜぬ姿あり
3
百瀬(ももせ)の滝を登りなば
忽(たちま)ち竜になりぬべき
わが身に似よや男子(おのこご)と
空に躍るや鯉のぼり
2歌詞の意味
「鯉のぼり」の歌には、男の子に鯉のぼりの鯉のように雄大に育ってほしいという願いが込められています。
1番
甍(いらか)の波と雲の波
かわら屋根(いらか)が波のように重なり
雲も波のようだ
重なる波の中空(なかぞら)を
その重なっているかわらの波と雲の波の間、空の中ほどに
橘(たちばな)かおる朝風に
橘の花の香りがする朝の風に吹かれて
↓たちばなの花。5~6月に白い花が咲きます。ふんわりしたフローラル系の香り。
![](https://hanasjoho.com/wp-content/uploads/2016/04/c497a8eab8b900ec75c8090fae4b1ca4.jpg)
鳥羽商工会議所 [Attribution], via Wikimedia Commons
![](https://hanasjoho.com/wp-content/uploads/2016/04/d689c0e417df30d86059b2a828a3a855.jpg)
Degueulasse [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
高く泳ぐや、鯉のぼり
鯉のぼりが高く泳いでいる
2番
開ける広き其(そ)の口に
開いている、広い大きなその口は
舟をも呑(の)まん様(さま)見えて
船さえ飲み込んでしまいそうで
ゆたかに振(ふる)う尾鰭(おひれ)には
ゆったりと豊かに振っている尾ひれには
物に動ぜぬ姿あり
ものに動じない堂々とした様子が表れている
3番
百瀬(ももせ)の滝を登りなば
たくさんの、浅くて流れの速い場所(瀬)が続く滝を登り切れば
↑兵庫県加古川の瀬。「百」はたくさんのという意味。
忽(たちま)ち竜になりぬべき
たちまち龍に変わる(と決まっている)
![歌川国貞](https://hanasjoho.com/wp-content/uploads/2016/04/a091431d952589b1491e1cfbd6231717.jpg)
歌川国貞
わが身に似よや男子(おのこご)と
「そんな私のようになりなさい、男の子たちよ」と
空に躍(おど)るや鯉のぼり
鯉のぼりが空で勢いよくはねている。
鯉のぼりの今昔
1由来
江戸時代。
男の子が「健康に育ち立身出世するように」という願いから、武士が庭にかざった鯉の形の吹き流しが始まりです。
これが商人に広まり、江戸では端午の節句に鯉のぼりが上がるようになりました。*日本中で鯉のぼりがあげられるようになったのは戦後。日本が豊かになってからです。
鯉は立身出世のシンボルでした。
「忽ち龍になりぬべき」:鯉の滝登り
中国には、「龍門」という流れの速い川を登り切った鯉は龍になる、という伝説があります。
そこで、大変な競争に勝ち残った人を「龍門を登った」といい、成功のための関門を「登竜門(とうりゅうもん)」と言うようになりました。
鯉のぼりを上げるのは、わが子に鯉のように体も心もたくましく成長して社会で成功してほしいという願いから。
*竜は龍の略字。
2初めは黒い真鯉だけ
江戸時代は真鯉(まごい)だけ、明治時代から緋鯉も飾られるようになりました。
男尊女卑だったから、ではなくて、江戸時代には黒い鯉しかいなかったからだそうです!
緋鯉(ひごい=赤い鯉)は、明治時代から新潟で養殖が始まりました。全国に知られ大人気になったのは大正時代に入ってから。
昭和6年に作られた「屋根より高いこいのぼり」の歌でも「小さい緋鯉はこどもたち」と歌われています。
・・・まだこの頃は、緋鯉はお母さんではなかったんです。
今は、家族みんなの鯉のぼりがあります。家族それぞれの個性が大事にされる時代になったんですね。
3歌の作者
作詞者・作曲者
いらかの波の「鯉のぼり」の歌は、文部省唱歌の一つ。
作詞
作詞者の名前は残っていません。
・・・文部省唱歌は、文部省が教科書にのせる曲として作詞家・作曲家に依頼して作ったもの。
作者の名前は出さない契約だったので、この「いらかの波…」だけでなく、今も誰が作ったのかよくわからない曲も多いです。
作曲
作曲者は弘田龍太郎さん。お名前も鯉のぼりにふさわしく勇壮ですね。
大正2年、東京音楽学校(今の東京芸術大学)在籍中にこの曲を作曲。
*屋根より高い「こいのぼり」の18年前です。
音楽学校で教授として教えた後、作曲に専念。晩年は、長女夫婦の経営する幼稚園で、子供たちのリズム遊びの指導もなさったそうです。
:浜千鳥、叱られて、春よ来い、靴が鳴る
歌い方のコツ
コーラスの指導をしてくださる先生によると、次の点に気をつけるといい歌になるそうです。
1)初めは力強く、後は少しおさえる
「いらかの波と」は大きく力強く「雲の波」はやさしめに、
「重なる波の」は大きく「中空に」はやさしめに…
2)情景を思い浮かべながら
尾ひれがゆったりと揺れている姿や、鯉のぼりが空ではねているところなど…。
3)ゆったり大らかに/元気に力強く
「鯉のぼりのように雄大に育って欲しい」という親の願いを歌っているので、ゆったり大らかな感じで歌うのが基本。
でも現代には少しゆっくりすぎかも。
コーラスサークルでは原曲より速めに力強く歌いました。
終わりに
ゆうゆうと空を泳ぐ「鯉のぼり」の歌。
子供が小学校の3・4年になったら、教えてあげて、これからもずっと残していきたい曲ですね。
楽しく元気に歌ってお楽しみ下さい。