「秋雨前線」とは|いつまで停滞?地域差とメカニズム

秋雨(あきさめ)は、秋の初めの長雨です。シーズンは8月終わりから10月はじめ。特に、東日本は雨の日が多くなります。

この時期は、夏から冬へ向けて、季節が変わり始める時期。冬の冷たい高気圧と夏の暖かい高気圧がせめぎあって雨を降らせます。

・・・2021年8月中旬の長雨も、気象庁では正式な発表はありませんが、気象予報士によっては「秋雨」とされていますね。

しとしと降ることが多いですが、台風が接近すると、大雨になることもあります。

ここでは

・地域ごとの秋雨の時期(いつからいつまで)
・秋雨の意味
・前線が生まれる理由(メカニズム)
・雨の量や降り方

などについてご紹介します。

秋雨はいつからいつまで

✔2021年、8月、9月の長雨

(1)秋雨の表現はまだない

8月中旬に、雨がつづき気温も低くなった2021年。

気象庁の報道発表「8月の天候」、「夏(6~8月)の天候」では、「秋雨前線」という表現は使われていません。

・・・中旬に本州付近に停滞した前線などの影響により・・・

気象庁報道発表「8月の天候」

「秋雨前線」の定義

夏から秋への季節の移行期に、日本付近に出現して、長雨をもたらす停滞前線。

気象庁「予報用語」

気象予報士によっては、「秋雨前線」の表現を使われています。

8月15日の天気図では、北に高気圧、南に高気圧、日本付近に停滞前線があるのですが。

気象庁では、今のところ8月中旬の長雨は「秋雨前線」と判断されていないようですね。

季節がしっかり進んだ後に、さかのぼって使われることがあるのか…?

 

(2)8月の記録的な大雨

8月の降水量を平年と比べると、東日本・西日本で平年より多くなっています。

濃い水色の地域は、平年の170%~300%(1.7倍~3倍)。緑色の地域は、平年の300%(3倍)以上です。

8月の降水量(平年比)は、九州北部地方(山口含む)で396%。平年の3.96倍で、1946年の統計開始以降、最高になりました。

近畿地方も、284%。平年の2.84倍という多さ。こちらも1946年の統計開始以降、多い方から2番目でした。

東・西日本は、その他の地域も、平年の1.7倍以上になっています。

8月中旬は、まるで梅雨のような、いつまでも雨の予報がつつづくうっとうしい期間でしたね。

(3)9月初め

気象庁の週間天気予報では、9月は、1日から8日頃まで、雨やくもりの予想が出ています。

いよいよ、秋雨シーズンですね。

(3)西日本は気温も下がった

西日本の8月の平均気温は平年より0~1℃低く、特に熊本周辺は1~2℃低くなっています。

東京や静岡など、降水量は多かったのに、気温はやや高めになってしまったようです。

 

秋雨の時期

8月後半~10月上旬

気象庁によると

「秋雨は おおむね8月後半から10月にかけての現象だが 地域差がある

とのこと。

さて、この地域差とはどんなものでしょう。

 

秋雨の時期の違い
:地域別

秋雨前線は北日本から南下しながら東に進みます。

そこでどちらかと言えば、北日本は8月下旬・9月上旬に雨が多く、東日本・西日本は9月中・下旬に多いようです。*東京や福岡は例外です。

 

北日本
札幌
:8月下旬~9月いっぱい(多いのは8月下旬
仙台
:8月下旬~10月上旬(多いのは8月下旬・9月中旬

東日本
東京
:8月下旬~10月上旬(9月中下旬から雨が多く10月上旬は特に多い)
名古屋
:8月下旬~10月上旬(9月中旬が一番多く、上旬の2倍位降る。下旬も多い)

西日本
大阪
:9月上旬~10月中旬 (多いのは9月中・下旬
福岡
:8月中旬~9月下旬(多いのは8月中・下旬

*平年値です。
*秋雨は入り・明けははっきりしないため発表されません。ここでは降水量が前後の時期に比べてぐっと多くなっている期間をあげています。

福岡で降水量が多いのは8月中~下旬。

2019年8月26日~29日。、佐賀県などに浸水被害をもたらした雨は、令和元年8月「前線による大雨」と命名されました。

秋雨前線に、太平洋高気圧や南方の台風から暖かい湿った空気が吹き込み、九州北部地方を中心に大雨となったものです。

秋雨とは

秋雨の意味

秋雨は、気象庁の予報用語です。

秋雨(あきさめ)
:秋にふる雨。長雨になりやすい(気象庁)

 

秋の長雨(ながあめ)・秋霖(しゅうりん)・秋入梅・秋黴雨(あきついり)とも呼ばれます。

*天気予報では「秋雨(あきさめ)」が、報道発表などでは9月頃の長雨について「秋の長雨」「秋りん」が使われます。

 

秋雨の特徴

1)雨の「量」にも地域差!

秋雨は北・東日本にたくさん降ります。*梅雨には逆に西日本の降水量が多くなります。

秋雨の時期の平年の降水量を比べると、東京は大阪の1.5倍近く多いです。

 

2)しとしと雨や、くもりも多い

雨

秋雨前線は、梅雨前線と同じ停滞前線。でも梅雨前線ほど強い停滞前線ではないため長続きしません

・・・短い時間に強い雨を降らせる「寒冷前線」になったり、弱い雨が降り続く「温暖前線」になったり、前線とまでいえない「気圧の谷」になったり、と姿をかえます。

そこでしっかり雨が降るとは限らず、しとしと雨やくもりの日も多くなります。

 

3)台風と重なると、大雨

台風は、台風から離れた地域にも大きな影響を与えることがあります。

上陸しなくても、接近するだけで、秋雨前線を刺激して大雨を降らせたりします。

平成27年9月関東・東北豪雨

平成27年(2015年)秋、本州の南岸に停滞していた秋雨前線に、南の台風から湿った風が吹き込み、前線を刺激。*9月7日までは、台風のたまご(熱帯低気圧)でした。

台風の接近につれ、 9月7日には中国地方から東北にかけて大雨に。上陸の2日前でした。

・・・台風は、9月9日10時すぎに愛知県に上陸。まっすぐ北上して、その日の14時には日本海へ抜けました。

特に被害が大きかったのは、台風が通過しなかった関東・東北でした。

関東・東北の被害

・死者8人、負傷者79人
・家屋全壊75棟、半壊3851棟
・24時間最大雨量:551mm(日光)

↓2015年9月7日の天気図
:赤と青のついた線が秋雨前線
:下、真ん中のTDが台風のたまご(熱帯低気圧)

梅雨に比べると、おとなしめの秋雨前線ですが、台風が接近するだけで、大変な被害になってしまいます。

 

台風が、日本に上陸したり接近するは、8月が一番多く、次が9月です。つづいて10月、7月の順になります。

日本の近くを通ることが多いのは、6月、8月9月気象庁:台風の発生、接近、上陸、経路

秋雨シーズンは、10月上旬まで。それまでは、台風情報に要注意ですね。

 

秋雨前線とは(メカニズム)

秋雨は、暑い太平洋高気圧と冷たいシベリア高気圧がぶつかって降る雨。

二つの高気圧の間にできるのが、秋雨前線です。

どちらの勢力も強いと、前線は日本付近に停滞。雨やくもりの日がつづきます。

夏と秋(冬)の戦いともいえますね。

10月に入ると、夏(太平洋高気圧)は秋に押されて南下、最後には南の海上に去っていきます。

 

1)8月後半
:夏の高気圧は弱り、冬の高気圧が発達

夏に日本をおおっているのが太平洋高気圧。海や地面の熱であたたまった空気のかたまり。亜熱帯高気圧です。

・・・8月後半には、日本の地面の温度も下がっていき太平洋高気圧もパワーをなくしていきます。

 

 

一方、大陸では空気が冷えてきて冷たい高気圧が生まれます。これがシベリア高気圧寒冷高気圧です。

シベリア高気圧は、太平洋高気圧が弱くなると日本に張りだして来ます。

 

2)8月下旬~10月上旬
:日本上空でぶつかる!

この二つの高気圧が、日本付近でせめぎあうのが、8月下旬から10月上旬。

暖かい空気と冷たい空気が、同じくらいの力でぶつかるので前線ができて日本に雨が降ります。

↓停滞前線(秋雨前線、梅雨前線など)

3)10月半ば
:前線は南下して去る

その後、冷たい高気圧を増し、暖かい高気圧弱まるにつれて、秋雨前線は、日本を南下。

10月中ごろには、冷たい空気勝って暖かい空気は日本から遠ざかり、秋雨のシーズンは終わります。

*ほかに移動性高気圧、冷たいオホーツク高気圧も秋雨をもたらします。

秋雨が終わったら

10月半ばからは「移動性高気圧」と「低気圧」が交互にやってきます。

そこで晴れが何日か続いたらくもりや雨、それからまた晴れといった天気が周期的に変わる秋らしい時期に。

晴れると高く青い空の晴天になります。11月3日は晴れの特異日!

終わりに

秋雨で雨が多いのは、日本。西日本の梅雨なみの雨が降り、台風と重なった時の被害も恐ろしいです

ただ、この時期、西日本もまだからっとした青空ではありません。いつも雲があって蒸し暑さも残ります。

10月中旬になれば、全国的に気持ちのいい秋へ!それまでお元気でお過ごしください。