冬の訪れを実感する、冷たい木枯らし(こがらし)。
9月には北風が吹き始めますが、木枯らし1号の条件である西高東低の冬型の気圧配置になって強く吹くのは、10月半ば以降です。
木枯らし1号の発表は、東京と近畿だけ。
*他の太平洋側でも同じような大風が吹きますが、観測・発表の対象になっていません。
どちらも風速8m/s以上が条件で、対象となる期間など少し違いがあります。
ここでは、木枯らし1号の
・最近の木枯らし1号(東京は吹かない年も)
・東京、近畿の定義と条件、実際に吹いた時期
・語源とメカニズム
・ほかの地域の木枯らし
についてご紹介します。
1最近の木枯らし1号
木枯らし1号は、気象庁の天気相談所(東京地方)と大阪管区気象台(近畿地方)から発表されます。
1)東京は、最近少ない
東京地方では、2018年、2019年、2021年には吹きませんでした(観測なし)。近畿地方は、毎年吹きました。
*ここでは、東京と比較するため、近畿地方については大阪か神戸のみ最大瞬間風速を記載しています。ほかにもっと強風が吹いている地域がありました。
:東京 観測なし
:近畿 11月22日。神戸、最大瞬間風速13.6m/s
:東京 観測なし
:近畿 11月4日。大阪・神戸、最大瞬間風速11.5m/s
2020年
:東京 11月4日。最大瞬間風速15.8m/s
:近畿 10月23日。神戸、〃 13.8m/s
:東京 観測なし
:近畿 10月23日。神戸、最大瞬間風速11.3m/s
東京で観測がなかった年も、木枯らしが吹かなかったわけではありません。
条件とされる期間内に吹いても、風速が足りないなどで「木枯らし1号」と認定されませんでした。
*2018年、2019年は10月半ばから11月末まで、冬型の気圧配置が強まらず、寒気が流れ込まなかったとされました。
東京では、2019年秋は平年より1.5℃以上、2018年秋は1℃以上高い、暖かい秋でした。
↓2018年秋(9~11月)平年との気温差
2)過去30年で、吹かなかった回数
木枯らし1号が、現在と同じ条件で観測されるようになったのは、1991年からです。
その後30年間で木枯らし1号が吹かなかったのは、
東京 3回(2018、2019、2021)
近畿 1回(1992)
近畿は、吹かなかったことが1992年に1回あるだけ。
東京は3回あって、ここ5年に集中しています。
3)東京は、木枯らしが吹きにくい?
東京で木枯らし1号が吹かない(観測されない)年が、最近多いのはどうしてでしょう。
理由①東京は、観測地点が少なすぎ?
近畿は、舞鶴や和歌山など、日本海側も太平洋側も観測範囲に含まれています。
海のそばは、強風が吹きやすいですね。神戸も海沿いです。*2021年、京都府舞鶴の最大瞬間風速は17.1mでした。
東京は、北の丸公園だけ。観測地点が1カ所です。
でも、東京の木枯らし1号は1951年から70年、ずっと観測されてきて、吹かなかったのは最近の3回を含む7回だけ。
観測地点の少なさが、最近吹かなかった理由とはいえないようですね。
理由②東京は、観測期間が短い
木枯らし1号と認められる期間は、東京と大阪では違います。
東京は10月半ば~11月末、近畿は霜降(10/23頃)~冬至(12/22頃)と、東京の方がずっと短いです。
とはいえ、木枯らし1号は冬の訪れを告げる季節現象。
その地域の気候状況に応じて条件が決められていますから、東京・近畿で統一するというわけにはいきません。
結論:まだわからない
東京で木枯らし1号が少なかったのは、ここ5年ほどのこと。
長く続く傾向なのか、まだわかりません。気象庁などで原因についての判断はされていないようです。
これからは、また吹いてくれるといいですね。
2木枯らし1号の定義と条件
1)気象庁の定義
気象庁による木枯らし1号の定義は
季節が秋から冬へと変わる時期に、初めて吹く北よりの強い風
ー気象庁
2)東京・近畿の条件
木枯らしは全国の太平洋側で吹きますが、木枯らし1号が発表されるのは、東京地方と近畿地方だけです。
・・・どちらも、冬型の気圧配置、北寄りの風、最大風速8m/sは共通しています。
違うのは、期間。近畿では、東京より1週間ほど遅く始まり、3週間ほど後の冬至までつづきます。*以下の太字は当サイトで強調。
東京では、これらを基本に総合的に判断して発表されます。「東京地方の木枯らし1号」気象庁天気相談所作成
近畿地方でも、おおむねこれらの目安を満たした最初の日を基本に、総合的に判断しています。お知らせ 大阪管区気象台
*近畿地方:京都、大阪、兵庫、奈良、滋賀、和歌山
3)条件をていねいに、実際に吹いた時期は?
(1) 期間
*10月半ばは15日から、というわけではありません。1988年には10月13日に木枯らし1号が発表されています。
:霜降10月23日ごろ~冬至12月22日ごろまで
*霜降、冬至は、年によって少し日にちがずれます。
✔実際に吹いた時期は?
過去30年(1992~2021年)では、
東京と大阪で、同じ日に吹き荒れたこともあります(過去30年で8回)。
(2) 冬型の気圧配置とは
:西高東低の冬型
冬になると日本の西側、シベリアに冷たい高気圧が発生。
日本の東海、アリューシャン列島付近には低気圧が発生します。
そして、西のシベリア高気圧から冷たい空気が日本に向かって流れ込んできます。
↓2017年10月30日の天気図
(東京・近畿に木枯らし1号)
右にL(低気圧)左にH(高気圧)があります。
これが西高東低の冬型の気圧配置。
H(高気圧)からL(低気圧)に向かって、びゅうびゅうと風が吹き込んで、2017年の木枯らし1号となりました。
(3) 風向
・近畿:北寄りの風
*北寄りの風は、北の方向から吹く風。
(4) 風速
:最大風速8m/s以上*東京は「おおむね風力5(風速8m/s)以上」
最大風速は、気象庁の用語では10分間平均風速の最大値。
木枯らし1号では、10分間、平均して秒速8m以上の風が吹き続けたことになります。
東京・近畿とも、報道では最大瞬間風速を発表しています。
風の強さ:こんな感じ
(ビューフォート風力階級表から)
:木が揺れ始めて池にさざなみが立ち始める
風速10.8mから
:傘がさしにくくなる
→大阪2019年11.5m/s
:風に向かって歩きにくい
風速17.2mから
:風に向かって歩けない
→東京2014年17.3m/s
→神戸2017年20.7m/s
:屋根瓦がとぶ
3木枯らしの語源とメカニズム
1)木枯らしの語源
語源は、文字どおり、木々の葉を散らして「木を吹き枯らす」ことから。
からっ風が、土ぼこりや枯れ葉を巻き上げます。
「凩」とも書きます・・・「木」が風にすっぽり囲まれてしまっていますね。
2)木枯らしのでき方(メカニズム)
✔ほかの地域は、吹かない?
木枯らし1号は、東京や近畿以外の太平洋側でも吹いています。
ただ、東京・大阪以外の気象台は、これまで発表していないのでこれからも発表しない、という方針のようです。
でも、気象予報士の方が、その地域の木枯らしに言及されることがあります。
2015年福岡では、お天気キャスターの方がテレビで10月28日福岡の「木枯らし1号」を発表されました。
・・・気象庁に問合せたところ、発表していいと言われたそうです。
*福岡を含め九州は「太平洋側気候」です。北九州・大分の一部は瀬戸内海式気候。
ほかの地域でもやってもらいたいですね。
終わりに
木枯らし1号は、東京と大阪でしか発表されません。が、もちろんそのほかの地域でも、同じような大風は吹いています。
太平洋側で、10月半ば以降に北よりの強い風が吹いたら、また東京・近畿で木枯らし1号が吹いたら、お住まいの地域の天気予報のお天気キャスターのコメントに注目しましょう。
「北寄りの風」「風速8m以上」「冬型の気圧配置」といったら、それが木枯らし(たぶん1号)です。