「狐の嫁入り」意味と由来ー昼は天気雨、夜は狐火


狐が嫁入りするときには、不思議なことが起こります。

昼に嫁入りしたら天気雨が降り、夜なら、妖しい狐火が並んで揺れて…。

きつねには、何かしら神秘的でちょっと怖いイメージがありますね。

 

ここでは、「狐の嫁入り」の意味と由来、イベントについて、ご紹介します。

1「狐の嫁入り」とは

意味

「狐の嫁入り」の意味は、地域によって違います。

関東より西では、天気雨をさし、東北や北陸、関東、三重や奈良、鳥取などでは、夜の怪しい火が連なったものをさしました。

昼の嫁入り
:天気雨
夜の嫁入り
:狐火(きつねび)

 

1)昼の嫁入り:天気雨

現象
晴れているのに、雨が降る。

 

お日さまが照っているのに、ぱらぱらさぁーっと雨が降り、すぐにやんでしまうことがありますね。空を見ても、近くに雲は見当たりません。

昔は、狐につままれたような気がして、狐が化かしたんだとか、狐のいたずら、狐が自分たちの嫁入り行列を人の目から隠すために降らせたと考えました。

ほんとうは?

天気雨は、雨を降らせた雲が

①雲の形をなくして、消えてしまったり
②上空の風に流されて、飛ばされてしまったり

したときに生まれる気象現象なんです。

近くに雲はあるけど真上じゃないとか、山を越えて見えなくなっていることもあります。

特に、わた雲などは、10分くらいで消えてしまいます。*わた雲は、雨を降らすことがある「積雲」。大きく発達すると入道雲になります。

 

2)夜の嫁入り:狐火

現象

夜、山野に、ちょうちんの灯りや松明(たいまつ)のような火が、およそ1㎞ほど長く連なって見える。

嫁入り行列の灯りかと思うが、どこでも嫁入りは行われていなかった。

昔の人の考え
(1)嫁入り行列

昔は、嫁入りは夜に行われていました。太田市情報館「日本結婚史」

江戸時代、武家の婚礼は、夕方、暗くなる頃、花嫁が輿(こし)に乗って実家を出発することから始まりました。

兄弟や家臣がお供をして、化粧道具や裁縫道具などを、たんすや長持(ながもち:衣装や布団を入れる大きな箱)に入れて、運びました。

お江戸の結婚

これが、嫁入り行列です。暗いのでちょうちんを灯しました。嫁ぎ先についたら、そこで三々九度の盃を交わしました。

当時は、夜中に、長く連なった灯りをみたら、「あぁ、どこかの嫁入りだな」と思うのが自然だったんですね。

*明治から昭和初期までは、庶民も嫁入り行列で婚家へ嫁ぎました。

昔の人の考え
(2)狐火だ!

夜、山で平野で、墓地で…不思議な火が宙に浮かぶという言い伝えや目撃談はたくさんあります。

狐火は、こういった怪火の一つ。

狐が火の玉をくわえている、動物の骨を松明にしてくわえている、しっぽで火を灯している、狐の吐く息だ、などどいわれていました。

↓きつねの顔の近くに狐火が。

歌川広重(部分)

火の色は、赤、橙色、青などいろいろです。

 

ほんとうは?

「狐の嫁入り」行列の火が、実際は何なのか、まだわかっていません。

狐の火や人魂、鬼火でないことは確かですが…(多分^^)。

狐火がみえる原因
1)リン説…死体の骨に含まれるリンが自然に発火したもの。*60℃で自然発火し、青白く光ります。
2)光の屈折説…谷から山裾にひろがる扇状地に現れやすい、光の異常屈折によるもの。

田植えの後には「虫送り」といって、松明をかざして豊作を祈る行事が各地で行われていたそうです。遠くで、怪しい火の連なりに見えたかもしれません。

 

・・・行列の火は、近づくと消えて見えなくなるという言い伝えもあります。光の屈折というのはありそうですね。

人の目は、だまされやすいもの。

海の漁で、魚を集める集魚灯の灯り(漁火:いさりび)も遠くから見ると、不思議な火に見えます。↓

ただ、リン説も光の屈折説も、どちらも、決め手に欠くようです。

やっぱり、狐火…?

 

2由来、きつねは聖か妖か

1)由来

江戸時代までには、北海道と沖縄を除く全国で、狐火や狐の嫁入りの言い伝えが広まっていました。実際に狐の嫁入りがあったとする地方もありました。

科学が発達しない昔は、不思議な現象は、神さま妖怪のしわざとされていました。

人々は、火のないところに浮かぶ火など、怖ろしいけど説明できない自然現象(たぶん…)を、妖しい力を持つ狐の火(狐火)と考え、心を落ち着けたようです。

 

2)きつね、聖か妖か

狐は、豊作と商売繁盛の神さま、稲荷神のお使い。聖なるものです。

でも、狐は人を化かすとか祟るとか、狐憑きとか、強い負のイメージがあります。

狐の嫁入り行列は、不思議な現象と受け止められていましたが、地域によっては、縁起がいい、豊作の兆しとされる一方、不作の兆し、死人が出るとするところもありました。

 

狐は、身近な動物で、はじめは、悪いイメージばかりではありませんでした。

『日本霊異記』には、キツネを奥さんにした話もあって、けなげな感じです。安倍晴明のお母さんも狐とされていましたね。

中世頃には、人間にとりつくなどマイナスのイメージが優勢に。警戒心が強くのイメージを担うに十分です。

↓こすからそうな顔つき….

↓何をたくらんでいるのか….

3狐の嫁入り 神事とイベント

現代では、狐はかわいいイメージも持っています。怖いものに惹かれる気持ちとあいまって、狐の嫁入り行列の神事やイベントが人気です。

・山口:花岡福徳稲荷神社 稲穂祭 狐の嫁入り…神事です。11月。

・新潟:阿川町 つがわ狐の嫁入り行列…狐メイクで参加できます。5月。

・京都:東山花灯路 狐の嫁入り巡行。3月。

↓京都 東山花灯路

まとめ

の狐の嫁入り:天気雨。

の狐の嫁入り:遠くに火がいくつも連なって見える。…狐の嫁入り行列のちょうちんや松明の灯り(狐火)。

夜の狐火が何なのか、まだ科学的に解明されてはいません。リンが燃えたとか、光の屈折で遠くの灯が見えた、などとされていますが…。

ちょっと怪しいきつね。やっぱり、惹きつけられますね。