キツネ「のんのんさん食べなはれ」八頭稲荷|「怖い」ということ

日本中に散らばるお稲荷さん。散歩していたら、あちこちに見つかります。

初雪の晩に、村人がお赤飯と油揚げをあげていたのが「八頭稲荷」です。

 

いわれ

町から少し離れたこの集落では、にわとりを飼い、卵を売って生計の足しにしていました。

でも、冬になると、食べ物がなくなったきつねがやってきて、大事なにわとりを捕ってしまいます。

困った村人は、和尚さんに相談。

和尚さんがお祈りすると、きつねが困って神さま(?)にたすけを乞うている姿がみえました。

和尚さんは、

「雪の降る夜に、米三合とあずき三合三勺をたいて作ったおむすびと、油揚げを三十三枚、八頭稲荷や周りの山に供えよ。」

と告げます。

村人が、初雪の降った日に、「のんのんさん食べなはれ」と言いながらそのとおりにお供えすると、その後キツネは出なくなったそうです。

原典『三田の民話100選』三田市教育委員会 

 

今のようす

現代では、田んぼは残るものの、きつねはいなくなりました。八頭稲荷のいわれも、忘れられてしまったようです。

でも、お参りする人はいて、小銭などが供えられています。

昔、村を助けてくださったんですものね。今も、きっと、何かから?

怖いということ

八頭稲荷には、赤い鳥居が並んでいます。

そこから、稲荷をのぞむ全体写真を撮ろうとしたとき、が強く吹きました。

風は、稲荷の横の木々を激しく揺らして音をたてました。

急に起こった風でした。

びっくりしてちょっと怖くて、「神さまがいると風が吹く」とか、「神さまが喜んでいる印」とか、「稲荷の写真を撮るからかな、ちゃんとお賽銭をあげなきゃ。」と思いました。

「理由をつけたくなるんだよね…怖い気持ちがあると。」とかも、薄く意識していました。

人があまりお参りしなくて(忘れられてるかも)、紫の垂れ幕も古びて破れていたし、お稲荷さんはたたるとかいう話もあるし…。

小さな稲荷には、小さなますが置いてあったので、500円玉を入れました。

そばに、1円玉が供えてあって、「ほかにお参りしている人がいる」とちょっと安心。

500円玉を入れると、気がすみました。ちゃんとごあいさつした気がして。何となく、「これで大丈夫」という気もしました。

風はとっくにやんでいました。

 

「昔、皆を助けてくださってありがとうございます」とお参りして帰りました。

怖い、という気持ち。

写真を撮るという無礼を、お賽銭であがなった気がするのも面白いです。