二百十日(にひゃくとおか)は台風が来る日といわれ、9月1日ころには各地で防災訓練が行われます。
台風は、実際にこの時期に多いのでしょうか。特異日がある?
さらに、二百二十日(にひゃくはつか)という日もあります。
ここでは、二百十日と二百二十日の
・台風が多い時期と「特異日」
・風鎮めのまつり
についてご紹介します。
意味と日にち
1暦の上での「雑節」
:台風に備えるべき時期
2農家の「三大厄日」
3立春から数える
1)意味とねらい
雑節の一つ
二百十日、二百二十日は、暦の上での「雑節」の一つです。
「雑節」は、暦(旧暦:太陰太陽暦)のなかで、特に農業や人々の暮らしに重要な節目を定めたものです。
二百十日、二百二十日は、「台風の被害に備える時期ですよ」と農家に注意を喚起するために設けられました。
稲の実(こめ)ができていく時期
一般に、稲は7月下旬から8月に穂がでて、40~50日ほどで収穫を迎えます。
8月から9月は、稲穂にでんぷんがたまって実が充実していく時期、「こめ」ができていく時期です。
この大事な時期に、台風にうたれると
・稲が倒れたり
・穂に実が入らないままスカスカになったり
・病気になったり
それまでの苦労が水のあわになってしまいます。
そこで農家では、台風が来ても被害が少ないように、田んぼの水を深くして稲が倒れるのを防ぐ、といった対策をとらなければなりません。
二百十日、二百二十日が暦に加えられたのは江戸時代。国民の大部分が農民だった時代です。
米が不作になると、農民だけでなく藩も幕府も大打撃です。
二百十日、二百二十日は、台風被害への備えを喚起する、とても大切な雑節だったんですね。
2)農家の「三大厄日」
二百十日と二百二十日は、農家の「三大厄日」のうちの二つ。
農家の三大厄日
・二百十日:9/1頃
・二百二十日:9/11頃
・八朔(はっさく):8月下旬~9月下旬
農家の「三大厄日」はすべて、8月から9月に集中しています。
米づくりの正念場で、一番大事な時期。そして、台風がよく来て一番危険も多い時期だったんですね。
八朔ってなに?
三大厄日のうち、「八朔(はっさく)」は、八月朔日(ついたち)を省略したもの。
旧暦(太陰太陽暦)のうち、太陽暦部分にあたる「二百十日」とは違って、「八朔」は太陰暦部分にあたります。
旧暦8月1日のことです。新暦では、毎年8月下旬から9月下旬のどこかになります。
*2019年は8月30日。2020年は9月17日。
「八朔」は、もともとは厄日ではありませんでした。室町時代から、恩のある人に贈り物(稲の初穂や唐物、馬など)をする風習がありました。
台風の頃と時期が重なるため、厄日の一つとなったようです。
*果物の「ハッサク」の名の由来は、八朔のころから食べられたからともいわれます。今は12月~2月に収穫されるので、お店でみかけるのは2月ころですね。
3)日にちの数え方
立春から数えます。
立春の日にちは年によって違います。そこで二百十日も年によって変わります。
例年、210日目は8月31日か9月1日、220日目が9月10日か9月11日にあたります。
立春の日から数えて210日目
(8月31日か9月1日)
2019年は9月1日、2020年は8月31日
二百二十日
立春の日から数えて220日目
(9月10日か9月11日)
2019年は9月11日、2020年は9月10日
*立春は旧暦(太陰太陽暦)の太陽暦部分なので、旧暦でも日にちはかわりません。2019年の二百十日は旧暦の8月3日、新暦の9月1日です。
台風が多い時期と特異日
さて、二百十日や二百二十日に、本当に台風が多いのでしょうか。
気象庁の最近の統計をみると、過去30年ほどは、8月の台風が一番多くなっています。
1)台風が多いのは8月
気象庁の平年値では、日本への上陸は8月が一番多く、次に9月、接近も8月が一番多くなっています。
*平年値:1980年から2010年までの平均
8月 0.9個
9月 0.8個
接近した台風
8月 3.4個
9月 2.9個
台風が接近しただけでも、地域によっては大きな被害をもたらします。
台風の被害に備えるには、二百十日ではちょっと遅いかもしれませんね。
二百十日、二百二十日、八朔で、台風への注意を再三うながし、できるだけ台風シーズンをカバーするというところだったのでしょうか。
2)地球上の台風が一番多かった日は
地球上に台風が存在した個数が最も多い日は、1951年から2010年の60年間の平均では、8月31日、9月1日ころということです。北本 朝展 @ 国立情報学研究所(NII)
平均すると、毎年この頃には、太平洋上やアジアに1個以上の台風が存在していたことになります。
日本に上陸した数ではありませんが、くしくも二百十日に一致しています!
3)台風の特異日
「何故かわからないけど台風がよく来る」とされる日が、台風の特異日。
科学的な根拠はありません。台風が上陸するのは平均で年に2.7個。もとの数も少なくて、統計的に有意、とかではないのです。
でも、なぜかその日に気象庁が「〇〇台風」と命名するほどの大きな台風が多かったんです。
戦後、気象庁が命名した台風は、昭和時代のものだけ。
平成になってからは、命名されるほどの被害の大きい台風はありません。
ただ、命名台風ほどでなくとも、大きな被害をもたらした台風はたくさんあります。
・「昭和54年台風第20号」
10月19日に日本に上陸、本州を縦断した北海道に再上陸。死者は110人でした。
九州に上陸、中国・四国・北海道に影響し、被害総額は490億円。激甚災害に指定されました。
台風シーズンは、特異日にとらわれず、警戒要ですね。
防災と風鎮めの祭り
二百十日にあたることの多い9月1日は「防災の日」。
また、二百十日の前後に、各地の神社などで「風を鎮めて豊作を願う」祭りが行われています。
防災の日:9月1日
9月1日は、関東大震災が起こった日。
大正12年に起きた関東大震災では、およそ190万人が被災。東京・神奈川を中心に10万5千人あまりの死者・行方不明者が出ました。
↓靖国神社にも仮設住宅
そして、1959年9月26日。「伊勢湾台風」が、愛知・三重を中心に5,098人の死者・行方不明者を出しました。
翌1960年、関東大震災、台風シーズン、二百十日なども考慮して、9月1日が「防災の日」に制定されました。
風鎮めの祭り
昔は、豪雨や台風、地震や津波は、人知を超えた神によるものと考えられていました。
現在も、各地で、風や雨をつかさどる神さまを鎮めるまつりが行われています。
富山の「おわら風の盆」が有名ですね。
元禄時代からつづく、収穫前の稲が被害にあわないよう「風を鎮め豊作を祈願する」お祭りです。9月1日~3日の3日間。
ほかにも、兵庫県伊和神社の「風鎮祭(油万燈)」、風神をまつる奈良県龍田大社の「風鎮大祭」(7/1)などがあります。
まとめ
長い稲作の経験からもうけられた二百十日、二百二十日。
さらに、関東大震災、伊勢湾台風などの大災害の体験もあって設けられた防災の日。
・・・一生大災害に会わないことも多いですが、大き目の地震はよく起きます。数百年・数千年に一度の噴火や地震は、いつ起きるかわかりません。
この機会に、人災を防ぎ、生き抜くための準備をしておきましょう。