私は、栄養を考えながら料理をするのがとても大変だと感じていました。
そこで、
「この本は、お料理を作るのがたいへんと感じている人に読んで欲しいのです。」
という文章を見たときには「これは読まなきゃ」と、即購入を決めました。
読んでみて、かなり安心し、また生活に「しん」があると落ち着くということにも共感しました。
シンプルライフのすすめなんですね。
ここでは、土井善晴さんの「一汁一菜でよいという提案」について
・栄養ある料理を作らなきゃという呪縛
・内容のかんたんなまとめ
・「しん」のあるシンプルライフの安定感
など、個人的な感想を書かせていただいています。
「栄養ある料理」をつくらなきゃという呪縛
はじめは「一汁一菜でよいという提案」を、図書館で借りようと思いました。でも、予約待ちの人が8人もいたので、待ちきれず買うことにしました。
この人気。
忙しくて、日々のメニューに迷いながら、シンプルなライフスタイルにしたいと考える女性が多いのでしょうか。忙しいワーキング子育てママは特に、毎日の食事に苦労されているでしょう。
日々の食事の準備は、女性にも男性にも重要で、しばしば面倒な仕事でもあります。
病院食みたいなバランスよい一汁三菜でなきゃ!!
それまでは、玄米菜食にこったり、がんにならないようにゲルソン療法をやったり、反動でインスタントラーメンを食べまくったり。
食生活は乱れていました。
ですから、2週間の入院で、薄味で一汁三菜の病院の食事には感動!
朝は牛乳やヨーグルト、昼に魚(大きい)が一切れ出たら夕食は肉。たんぱく質もしっかり摂れるように考えられていました。
料理を作ってもらえるのも嬉しくて^^
退院して2カ月はワタミの宅食をとりました。栄養士さんが作った献立で薄味、たんぱく質も10~20g、食物繊維もとれます。
でも高い。
昼・夕と組み合わせると、1日1100円ほどになります。たんぱく質の補充にヨーグルト、ほかに果物などで月に4万円を超えてしまいます。
一人で食費が4万円は多すぎますよね。
たんぱく質、食物繊維など必要十分とされる量で自分でメニューを考えていくと大変で、もう私にはできない!と泣きたくなりました。
*たんぱく質推奨量 女性18歳以上 1日50g
*食物繊維 〃 女性18才~70才未満 1日18g以上
何を作ったらいいかわからない不安と迷い
私がこの本を読みたいと思ったのは、がんサバイバーだったからです。
がんはさいわい早期だったのですが、それでもこれからどんな食事をしたらいいのか、健康であるために何を食べないといけないのか、不安でした。
病気になるまでは、ストレスと運動不足、食べ過ぎの日々。
退院後は、ストレスになっていた仕事はやめ、運動の情報を集めて実践を始めました。
でも、食生活は情報があふれ、それがまた矛盾しあっています。
「牛乳は必要だよね、それとも本当はがんに関係あるの?」
「小食にした方がいいの、それとも推奨量をしっかり食べるべき?」
などなど。
たんぱく質所要量、食物繊維の推奨量など健康のために必要とされる基準があります。
でも「どんなメニューがいいの?」
「ひじき煮を作るなら、ひじきの量と成分、人参の量と成分、油揚げの成分もはかって足すの?」
とかなり神経質になってしまい、どうしたらいいのか確信が持てません。
体力が戻ってきて自分で料理できるようになっても「お料理を作るのがたいへん」と感じ続けました。
おみそ汁に必要な食材を全部入れてしまう
でもこの本を読むと、そうだ、おみそ汁(汁物)に入れちゃったらいいんだ、と安心。
何食か同じ食材がつづいても構わない。たんぱく質と野菜をしっかりとればいいと思うととても楽になりました。
がんは、ストレスに強く、明るい人柄でお友だちも多く家庭円満で、規則正しい生活に腹八分目の食事をしていても、なるときにはなる病気です。
国がすすめる栄養指導に従った久山市で糖尿病の人が増えた久山パラドックスの例もあります。
本当のところ、どんな食事をしたらいいかはわかりません。傾向としてこんな食事、運動がいいというだけ。
だから、たんぱく質50gと野菜、食物繊維をある程度とることだけに気を付けていこうと思います。
*たんぱく質は鮭一切れ80gで18g、鶏肉100gで16.2g。
*食物繊維はほうれん草1/2束強150gで4.2g
一汁一菜は、ある程度のあきらめと大きな安心を与えてくれました。
内容のかんたんなまとめ
「ハレ」と「ケ」で食事づくりを区別する
家庭での毎日の食事は「ケ(ふだんの生活、日常)」の食事。外食でプロが作った食を食べたり、お祝いの日などにつくる料理は「ハレ(祝い事などの非日常)」の食事。
「ケ」の食事である毎日の料理は、
みそ汁
漬物
でじゅうぶん。
みそ汁には季節の野菜や肉や魚を入れる、というものです。
みそ汁のレシピ
この本には、レシピは、ちゃんとしたものは一つしかのっていません^^
おみそ汁の写真と、いろいろなコツはのっていますが、家庭の食の哲学、思想、考え方の本です。
ベーコンのおみそ汁
ブロッコリー、ミニトマト、ベーコン
深ねぎ、しいたけ、人参
ごま
具だくさんのおみそ汁なら、だしはとりません。具から染み出たうまみがだしになります。
野菜や肉は軽く焼いてから入れることもあります。
煮干しと昆布のおみそ汁
糸昆布、煮干し、きのこ
トマト、たまご
こういった野菜や魚を全部いっしょに煮込んであります。
具が少ないおみそ汁は煮立ったらすぐ火をとめますが、この具だくさんみそ汁は、みそを入れてから数分煮込んで味をしみこませます。
後で温めて食べてもいいようです。
野菜のポリフェノールも20分くらい煮込むと汁に溶け出すそうですから、みそ汁を煮込んでも構わないんですね。
土井善晴さんは、自宅では、ほんとうに家にある食材で一汁一菜の食事をされているそうです。
それなのに素人である私たちが、日々レシピに頭を悩ませるなんて?
「しん」のあるシンプルライフ
もう一つ、心に残ったのは、習慣と手作りの癒しの力。土井さんのことばから、考えさせられ再確認したことです。
「コントロール感」が心の安定に
暮らしにおいて大切なことは、自分自身の心の置き場、心地よい場所に帰ってくる生活のリズムを作ることだと思います。
その柱となるのが食事です。
一日、一日、必ず自分がコントロールしているところへ帰ってくることです。
人の幸福感の決め手になるものは、コントロール感だという意見があります。 新版 人生を変える80対20の法則
仕事がいやだと感じるのは、自分でコントロールする部分が少ないから。
無理をいうお客さまも大切にしなければならないし、早く会社を出てやりたいことがあっても残業をせざるを得ないこともあります。
家に帰れば、自分の自由にできますね。
でも疲れていて、いろいろやる気力はない。
食事だけは毎日するものだから、これをコントロールできたら、満足感を持つことができます。
私たちは、料理は「手をかけたものほどよい」と思いがち。
土井さんによると、料理がたいへんな理由の一つは、基準が高いから。
仕事で疲れているのに、帰ってから「ハレ」の日のようなちゃんとした料理を用意しようとする。
何種類かの彩よいおいしくて栄養のある食事をつくるなんて本当にたいへんなことなのに。
高度成長期、専業主婦で生きられた時代には「稼ぐ夫」と「家を守る妻」で役割分担。女性は主婦の仕事に傾注できました。
でも、今は無理。
家庭のふつうの食事を一汁一菜にし、これを基準にしたら、コントロール感が持てて心が安定し、時間に余裕も生まれます。
料理もシンプルに。
「手を使う」ことで、安心・満足
料理が手を使う仕事であることも重要だと思います。
たまに服を繕ったりすると、すごく心が落ち着くということはありませんか。
今ではほころびを縫った服は恥ずかしくて外には着ていけません。お店に行けば代わりの服は安い値段でいくらでも手に入りますから。
でも、家で着るお気にいりの服は破れたら縫い合わせたりします。すると、とても落ち着くのです。
何となく不安になったりあせったりしがちな毎日。
出来合いの料理をいくつか並べて立派な食卓にするより、あるものを使って簡単な手料理をつくるほうが、気持ちが落ち着き満足感も高くなりそうです。
終わりに
人はいずれみな死んでいくもの。病気にならない食事というのはないかもしれません。
栄養にこだわらずに、体にいいとされるものを適量、ストレスなく料理していきましょう。
そして空いた時間を、家族や人とあたたかく過ごしたり、自分が幸せになることに使いましょう。
この本は、健康にいい食事を作ろうと思ってかえってストレスをためてしまっている方や、忙しい働くお母さんにおすすめです。
今では、女性も働くことがふつうの時代になりながら、今なお、家事をするのは女性、家族の健康の責任をもつのまま、というこれまでと同じ価値観も求められています。
とてもやってられない気が…^^
忙しい女性を助けてくれる、いろいろな時短のための市販の食品もたくさんあります。
でも、加工食品や冷凍のお惣菜は、果糖、液糖など糖分が多いですし、さまざまな添加物も使われていて、ふと心配になることもありますね。
一汁一菜は、野菜や肉に、魚といった自然の食べ物をとることができる献立。
家族にも、「け」の日の一汁一菜に慣れてもらって、余裕のあるお休みの日に、外食したり、ごちそうをつくってあげましょう。
ただ、子どもたちには初めは不評そうです。一汁三菜、ハンバーグや焼き肉にサラダ、という食事に慣れていますから。
お弁当も、人の目が気になる思春期の子には、おかずは全部ごった煮というわけにはいきませんね。子どもにとってはお昼ご飯は外での食事ですし。
でも、できるだけシンプルに。
そして、朝ご飯や休日のお昼、自分と夫の夕食は家の食事。ときには一汁一菜にトライなさってみてください。
*むりやり何でもおみそ汁にいれてしまうと、ちっともおいしくないこともあります^^
あまり悩まずにお料理ができて、こころ穏やかに過ごせる時間がふえますように。