「ボブという名のストリートキャット」の映画がやってきます。
題名は「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」。
以前テレビで紹介されたときは、飼い主のジェームズ・ボーエンさんとボブのハイタッチが、かわいかったですね。
映画は、イギリスでは昨年2016年11月に公開。
2017年春のナショナル・フィルム・アワードUKでは、ベスト・ブリティッシュフィルムに選ばれています。
さて、8月公開のこの映画、どんな内容なんでしょう。
映画を観ましたので、ここでは
「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」
・あらすじと感想
・俳優さん情報
・ほんもののボブ?それとも代役?
・ボブと飼い主さんの現在
についてご紹介します。
「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」
公開日 8月26日
公式サイトはこちら
1あらすじと感想
あらすじ
薬物(ヘロイン)中毒になって、ロンドンでホームレスをしているジェームズ。ストリートミュージシャンとして手に入れるわずかな収入で生きのびています。
ドラッグへの依存を克服する公的なプログラムに参加していて「麻薬依存症を克服するための麻薬」といわれるメサドンを使っています。
でも依存症支援のスタッフに認められてアパートで生活できることになって。
そこでベティという気になる女性と出会い、野良猫(ボブ)が家の中に入り込んできます...。
メッセージ、テーマ
作者のジェームズさんによれば、この映画のメッセージは「誰でもセカンドチャンスを手にする価値がある」ということ。
今うまくいっていなくても、必ずチャンスがやってくる、自分がそうだったように。
麻薬依存症のホームレスの青年が、ボブと出会い、お互いを愛し、それを支えにドラッグ中毒を克服、ふつうの世界にもどってきました。
テーマは愛。映画では、父との和解も描かれました。
原作と違うところ
ストーリーは、いろいろ変えられています。もとガールフレンドのベルはベティという女性にかわっています。
ほかにもたとえば、
・ジェームズがコベントガーデンで駅員の意地悪のおかげで逮捕されるところとか(ジェームズも結構こりずに違反をくりかえしています)
・ビッグイッシューを売ることを禁じられて、こっそりよそのシマで売っていたこと
などは描かれていません。
本には正直にすべてを書いたジェームズさんですが、映画では子供の教育によくないと配慮があったのでしょうか^^
以前、イギリスの子どもと日本の子どもを比較した本を読んだことがあります。
それによると、幼稚園で花びんを割ってしまったとき、日本の子どもは「ごめんなさい」というのですが、イギリスの子どもの最初の反応は「私が悪いんじゃないわ!」というものでした^^
みんなとの和を大切にする日本と、自己を確立しようとするイギリスは違うんですね。
ジェームズさんも、原作では、グレーゾーンでもあえてサバイバルの道をさぐり続けます。
感想
この映画を観たくなったのは、もちろん主人公が猫だから。
それと、予告編でなけなしの小銭を出す主人公にすごく共感したからです。
筆者も自営業。現金があまりない時があるんです。 小銭だけで買い物するときはあんな感じ。すっかり感情移入してしまいました。
がんばれ!一匹と一人!
応援したくなります
主人公の俳優がイケメンなので、ぐいっと引き込まれました。
嫌われたくなくて、ベティに「薬は使っていない」とうそをついたり、ストリート仲間の死に心底ふるえたり。
ほんとうに苦しい生活なのに、ボブのおかげで明るい気持ちになって、人々からも人間として注目してもらえるようになって。
ちょっとだけお金も余裕ができて。本当によかった。
ベティといい雰囲気のときに、そばでいちゃつくカップルがいて照れる二人。イギリスらしい抑えた感じで好きでした。
大事なのは愛じゃないか?
主人公のジェームズは、ふつうにみると人生の負け犬。
でも、ストリートミュージシャンだからこそ、ビッグイッシューを売っているからこそ、いつでも猫のために病院にも行けます。
本当に大切なことのためにお金と時間を使えるんです。
「仕事と猫とどちらが大切か」といえば猫ですよね!
でも、わたしたちは仕事のために、家族や自分自身を犠牲にしがち。
忙しく通りを行きかう人たちは、ボブを見かけるとほほえみながら近寄ってきます。みんな仕事ややるべきことの多さに追われているからかもしれません。
やっぱり本物はいい!
さて、猫と暮らしている者としては、ボブの表情が少し硬く感じました。
やっぱりほんもののジェームズが相手じゃないからかな。代役さんもいたようですし。
その埋め合わせのように、映画の最後にはほんもののボブとジェームズの写真がたくさん出てきます。
すごくよかったですよ!
ジェームズさん、ちっともイケメンじゃないのに。幸せな笑顔だからかな。
2俳優さん情報
ジェームズ役:ルーク・トレッダウェイ
年齢や家族、経歴
生年月日
1984年9月10日生まれ
(2017年で33才)
家族
お父さんは建築家、お母さんは小学校の先生です。
サムというお兄さん(アーティスト)と、双子の弟(ハリー・トレッダウェイ 俳優)がいます。
経歴
弟のハリーとは一緒に音楽をやったり演劇を学びました。16才の時にはナショナルユースシアターで本格的に演劇にかかわって、その後演劇学校に進んでいます。
ちゃんと演技の勉強をしたんですね。
弟のハリーと演じた「ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド」結合性双生児の役で知られるようになり、その後は兄弟で役者として競い合っている感じです。
ルークは、日本で上映された映画では「タイタンの戦い」で預言者の役、「不屈の男 アンブロウクン」ではミラーの役を演じています。
受賞歴
2013年ローレンス・オリビエ賞の最優秀主演男優賞を受賞。
ローレンス・オリビエ賞は、イギリスのすぐれた演劇やオペラに対して与えられます。*アメリカのトニー賞にあたる権威のある賞です。
演劇の題名は「夜中に犬に起こった奇妙な事件」。15歳の自閉傾向をもつ主人公を演じました。
この人は歌手なの?
歌手ではありません。
でも、10代のころには弟とバンドを組んでいました。今も音楽ビデオを作ったりバンド仲間がいるようです。
だから歌がうまいんですね。ボブの映画ではCDが出ています。
「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」オリジナル・サウンドトラック
私生活は?ガールフレンドは?
なんと、映画の中でボブに薬を飲ませてあげたベティがルークのガールフレンドです!
ベティを演じたのは、ルタ・ゲドミンタスという女優さん。すごく変わってて魅力がありましたね。
1983年の8月生まれですから、今年34才。ルークより一つお姉さんです。
ルークは、彼女と、弟のハリーと、バンド仲間と一緒に暮らしています。4人暮らしです。
二人が知り合ったのは2011年、You insteadという映画で共演してから。
ボブの映画の時にはもう5年くらいつきあっていたんですね。今6年目?
3ボブはほんもの?代役6匹!
映画にはボブ本人(猫)も出演していますが、ボブに演技はできません。まったくのしろうとですからね。
それに、猫は芸を覚えないのでもともとトレーニングがとても難しいそうです(賢くないからじゃないんですよ。いうことをきかないんですね)。
そこで、それぞれのパートだけを練習^^した猫たちが、代役をつとめました。
6匹の俳優猫たち
代役は6匹。では、どれが本物のボブだったんでしょう?
正確にはわからないのですが、
代役ががんばったのは
・自転車のカゴに乗って走るところ
・小さなクリスマスツリーで遊ぶところ
・コベントガーデンの犬騒ぎで逃げ出すところ
・お父さんの家のクリスマスの飾りを台無しにするところ
など。
このほかはボブだったのでしょうか。
動きがないときはボブだったようです。*ただ肩に乗っているときもリラックスしているときも、ボブのこともあれば代役くんのこともあります。
ボブは、演技は若い連中にまかせて休んでいることも多かったようですよ^^
Youtubeでは、代役の猫たちの出演場面が紹介されています。俳優ルークの肩に乗るボブ、リラックスするボブなどを見ることができます。
How Many Cats Did It Take To Make ‘A Street Cat Named Bob’? | MTV
ほんもののジェームズといる時のボブ
本物のジェームズさんといっしょのボブは表情や動きがやわらかいですよね。
スカイテレビの映像で、自由にのびのびしたボブをご覧ください。*50秒過ぎからジェームズさん本人とボブが出てきます。
和みますね。
さて、映画には作者ジェームズさん本人も出演しています。
どこで出てくるかはお楽しみ!
ボブは何才?
ボブは映画で見ると、猫さんとしてはふけてます^^
役柄としては1才前後なんですが、映画を撮ったとき(2016年)ボブは11才。もう高齢猫さんなんですね。遊びかたもちょっと落ち着いています。
そこで気になるのは、ボブのこれから。今どうしているんでしょう?
4ボブたちは今
ジェームズさんの今
「ボブという名のストリートキャット」の本が出版されてから、ジェームズさんは家を買いました。
ビッグイッシューを売ることはやめ、ライターの人と一緒に続編を書いたり、映画撮影につきあったりしてきました。
また、ホームレスの人たちの支援や動物愛護のために、歌を歌って寄付を集めるなどチャリティ(慈善事業)をしています。
自分が今立ち直って幸せになれたので、「みんなにセカンドチャンスを」というのがジェームズさんの信念。
もちろん、ボブはどこへでも肩にのって出かけています。
ただ、2016年には寄付を集めて猫カフェを開こうとしたのですが失敗してしまいました。
お金は集まったのですが開店にいたらず。
いい場所が見つけられなかったようなのですが、仕方ないかもしれません。ジェームズさんは起業家としてはしろうとですものね。Mail Online
でも、絵本や本、映画(続編もできる?)が公開されること、ジェームズさんがボブと一緒に公の場に登場することが、わたしたちをはげましてやさしい気持ちにします。
事業ではなくても、存在そのものがチャリティという感じですよね。
それだけに、ジェームズさんが感じている責任は重そうです。がんばってください!
ボブは元気?
元気そうです。
今年2月21日のボブ。かわいい!
Today we’re spending the day filming with @StreetCatBob #excited! Can’t wait to share what we’re up to with you. #StreetCatBob pic.twitter.com/o3czRbe3hK
— Sony Pics At Home UK (@SonyPicsAtHome) 2017年2月21日
猫の平均寿命は、家の外に出る猫では13.26才。室内飼いで15.81才です。*野生なら4~5才。出典:ペットフード協会
今年12才になるボブも、そろそろ病気や寿命が気になります。
ボブを失ったら、ジェームズさんどんなにつらいでしょう。大丈夫でしょうか。
ジェームズさんにとっては、ボブを失うことは配偶者を失うことと同じくらいのストレスになるのでは(>_<、)*ストレス強度では配偶者の死が最強の100です。
ジェームズさんのFacebookには、今年(2017年)の5月25日にロンドンの猫専門クリニックに行った時の写真や、ボブがおもちゃで遊ぶシーンがアップされています。
*特に具合が悪いのじゃなくて健康チェックだったようです。
少しでも長生きしてもらいたいですね。
でも、まるで神さまからの贈り物のようにジェームズさんの前に現れたボブ。
ボブが去っていくときも、ジェームズさんが別れを受け入れて生き続けられるように、神さまがはからってくれると思います。
*2020年6月15日、ボブは亡くなりました。14歳以上だったそうです。
これから、虹の橋か天国で好きなことをして暮らして、ジェームズさんが亡くなるときには、「にゃにゃにゃにゃ!」と喜んで迎えに来てくれると思います。
ジェームズさん、頑張れ。
5原作もどうぞ
もしまだ原作を読んでらっしゃらなかったら、ぜひ読んでみてくださいね。
主人公の気持ちやボブの動きがとてもよくわかって、もっと感情移入できると思います。
ジェームズのボブへの愛情、ボブとジェームズの出会い、ボブのトイレの話^^など、細やかな二人の関係が描かれています。
続編もぜひ!
イギリスでは二つ続編が出ています。
日本で翻訳されているのは第2作、ボブがくれた世界 ぼくらの小さな冒険。
ボブがほかの人になついていってしまう別れの危機?があったりエピソードもいろいろ。
でも、いいのはジェームズさんの気持ちがさらに描かれていること。最後は読みながら涙でした。
原作の3作目は、クリスマスのお話。
↓2019年に出たジェームズさんのエッセイ。
二人(一人と一匹)の心のつながりが一番伝わる本かもしれません。ボブの自然なショットもたくさん。
終わりに
猫のボブが主演ですが^^この映画はジェームズ・ボーエンという青年がどう生きてきたのか、生き延びてきたかについてのお話しです。
猫好きはもちろん、猫好きさんにつきあって映画を観に行った犬好きさんも心動かされると思います。
友人と家族とお楽しみください。