健康寿命とは!終われば要介護?いいえ、もっと後まで自立しています!


自分が何才まで生きられるかという平均余命。うれしいことに、年を取るほど平均余命は長くなっていきます。限界はありますが。

ところが、健康寿命は平均余命より10年ほど短くなっています。

この健康寿命が終わると、介護保険のお世話になるのでしょうか?

いいえ、それは違います。

健康寿命=自立寿命ではありません。

いちばん軽い要支援1から重い要介護5まで、75歳から79歳で介護保険の対象になっているのは、9~11.6%です。

70代前半でもうだめなんだ、と心配する必要はありません。

ここでは

・平均寿命、平均余命とは
・健康寿命とは
・自立しているのは何才ころまで?

についてご紹介します。

平均寿命・平均余命とは

平均寿命
0才の平均余命

平均寿命とは、0才の赤ちゃんがあと何年生きられるかを示します。平成27年の簡易生命表では、男性80.79才、女性87.05才です。

 

 

平均余命:その年齢の人があと何年生きられるかの期待値(見込み)

自分があと何年生きられるかは、平均寿命ではなく、自分の年代に応じた平均余命で判断します。

この平均余命は、厚生省から「完全生命表(5年に1度)」「簡易生命表(毎年)」として公表されます

 

【完全生命表】平成27年

男女別の平均余命です。

現在の年齢
0才(0週)80.7586.99
40才41.7747.67
50才32.3638.07
60才23.5128.77
70才15.5919.85
80才8.8311.71
90才4.275.56

出典:厚生労働省

長く生きれば生きるほど、それまでの平均余命より長く生きる可能性が高くなります。

もう亡くなった方は統計の対象にならないからなんですが、ちょっと希望がもてます。

生命表は、ある期間における死亡状況(年齢別死亡率)が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や平均してあと何年生きられるかという期待値などを死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したものである
ー厚生労働省

 

健康寿命とは

最新の健康寿命は平成25年のものです。

健康寿命(平成25年)

男性71.19年
(平均寿命は80.21歳)
女性74.21年
(平均寿命は86.61歳)

 

健康でない期間は次のようになります。

健康でない期間(平成25年)

男性9.02年
女性12.4年

 

図の青が平均寿命(0歳の平均余命)、赤が健康寿命です。

上が男性、下が女性。

男女とも上の段が平成22年、下が平成25年。死亡率が減少し、不健康の割合も減少したため、健康寿命が少し伸びました。

 

 

さて、この健康寿命とは、また健康でない期間とはどのようなものなのでしょう。

1定義と意味

WHO(世界保健機関)による健康の定義はつぎのとおりです。

健康とは肉体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であって、単に疾病や病弱の存在しないことではない

 

1)厚生省による定義・意味

「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」健康日本21(第二次)

 

ー「日常生活に制限がない」とは

3年に1度の国民生活基礎調査大規模調査において、つぎの質問に「ない」と答えた場合です。

質問5)
あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか。1 ある
2 ない

国民生活基礎調査【健康票】

あっけないですね。

 

日常生活の制限の内容は、つぎの補問にあげられています。

補問5-1それはどのようなことに影響がありますか。あてはまるすべての番号に〇をつけてください。

1日常生活動作(起床、衣服着脱、食事、入浴など)
2外出(時間や作業量などが制限される)
3仕事、家事、学業(時間や作業などが制限される)
4運動(スポーツを含む)
5その他

 

具体的には

・腰痛がひどくて、庭仕事がつらい
・肩こりがひどくて、高いところの食器が取れなくなった

という場合も該当します。(腰痛、肩こりは「質問3自覚症状」のチェック項目に出てきます)

これくらいなら、という気もしますね。

でも、できないことが増えると体を動かす機会が減って、ほかのこともできないようになっていくので、やはり「健康」とはいえない状態です。

 

 

2)調査方法

調査員が家庭訪問

健康寿命のもとになるのは、厚生労働省が毎年実施している国民生活基礎調査のうち、三年に一度行われる大規模調査のデータ。*次は2019年

ます調査員が家庭訪問して調査票を渡し、本人に記入してもらいます。後日また調査員が訪問して回答の不備などを確認して回収します。*訪問先はランダム抽出

 

アンケート形式の自己申告です。

が、「健康状態の概念規定が客観的」とされています。▶「健康寿命の算定方法の指針」平成24年度厚生労働科学研費補助金による健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究班

 

*一応、日常生活の制限の具体的な内容もあり、後の質問には自覚症状などの項目もあるので、それを参考にすれば「健康上の問題で日常生活に何か影響」のあるなしを判断しやすくなっています。

 

3)「健康寿命」が与える誤解

健康寿命終われば寝たきり?No!

「健康寿命」の定義が「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」だけなので、健康寿命が終わると元気な時代も終わり。

人に世話してもらう毎日が待っている。そんな印象を持ちませんか?

本などでおmネットでも「平均寿命が80歳、健康で自分のことができる寿命(健康寿命)が70歳ですからや、この差が寝込んでいる期間になり」といった表現が見受けられます。

でも、これは誤解ですね。

健康寿命には、日常生活が自立しているかどうか(要介護度)は考慮されていません。

実際に日常生活が制限されて(庭仕事が前ほど長くできない)健康寿命が終わっても、日常生活が自立している人はたくさんいます。

・・・筆者の姉も心臓にペースメーカーを入れていて、65歳で健康寿命は終わりました。生活に制限はありますが、自立した生活を送って旅行にも出かけています。もちろん、ペースメーカーを入れずに健康な方がずっといいのですが…。

そこで、本当に知りたいのは「何才まで自立して生きられるか」ということ。

高血圧の薬を飲みながらでいい、自分で買い物をし食事を作り、仲間とでかける。好きな趣味に(制限はあっても)時間を使う。

そういう意味の「健康寿命」は何才くらいなのでしょう。

 

「自立」しているのは何才まで

国際長寿センターによる統計「元気に百歳になる方法」では、「健康状態が普通以上」の高齢者(65歳以上)は8割。若いほど健康状態は良いことが多いので単純にはいえませんが、健康で自立している人は多いようですね。

さて「自立」していられる寿命はどれくらいでしょうか。

厚生労働省では『日常生活動作が自立している期間の平均』というものを出しています。

これは、介護保険の要介護2以上の人たちを不健康とするもの。

でも、ずっと軽い要支援1でも、ふつうの感覚では「自立している」とはいえないように思います。

そこでここでは要介護2に至らない年齢と、要支援1に至らない(介護保険のお世話にならない)年齢をご紹介します。

 

1『日常生活動作が自立している期間の平均』

1)定義

健康な状態とは
日常生活動作が自立していること

要介護2~5を不健康(要介護)な状態とし、その他を健康(自立)な状態とする

▶参照:「健康寿命算定方法の指針」平成24年度厚生労働科学研究費補助金による健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究班

 

2)「自立している期間」はどのくらい?

「要介護2以上の介護」を必要としない期間「日常生活動作が自立している期間の平均」がこちら。

赤い部分が自立していない期間です。

 

平成22年の資料で、65歳の人についてみてみると

男性
平均余命 18.9年
自立している期間 17.2年
自立していない期間 1.6
女性
平均余命 24.0年
自立している期間 20.5年
自立していない期間 3.4

 

この区分では、男性が82.2才まで、女性が85.5才まで自立しているんです。

亡くなる前の1~3年間だけ、自立しない状態になるようです。実は健康寿命よりずっと長く元気でいられるのでしょうか?

でも、要介護2に至らない要介護1やそれより軽い要支援1,2は、本当に自立しているんでしょうか?

 

 

3)「要介護2」のレベル

この統計で「自立」とみなされなくなるのは要介護2から。

自立とみなされる要介護1、要支援2,1のレベルを見てみましょう。

 

要支援1
(自立)
居室の掃除や身の回りの世話の一部に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする
立ち上がりや片足での立位保持など複雑な動作に何らかの支えを必要とすることがある
排泄や食事はほとんどひとりでできる
要支援2
(自立)
身だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする

立ち上がりや片足での立位保持など複雑な動作に何らかの支えを必要とする

歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある

排泄や食事はほとんどひとりでできる
要介護1
(自立)
要支援2に同じ
問題行動や理解低下がみられることがある
要介護2

(自立していない

身だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話全般に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする

立ち上がりや片足での立位保持など複雑な動作に何らかの支えを必要とする

歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある

問題行動や理解低下がみられることがある

排泄や食事に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とすることがある

出典:静岡市 要介護度別の状態区分

*実際の認定は専門家による総合的な評価ですから、簡単には当てはめられません。

大きくまとめると

「要介護2」と「要介護1」の違いは

要介護になると
・身の回りの世話全般に見守りや手助けを必要とするようになる
排泄や食事に見守りや手助けを必要とすることがある

 

「要介護2」では排泄や食事が一人でできない可能性があるんですね。これは本当に自立しているとはいえません。

では、「日常生活動作が自立している期間」に含まれる要介護1、要支援2や1はどうでしょう。

「要介護「要支援2」との違いは
・認知症がみられるかどうか

要介護1は要支援2の状態に認知症がみられるときです。今日が何日かわからなかったり、作話をしてしまったりします。*作話:実際には経験していないことを本当に経験したと思って口にするなど。

 

「要支援2」「要支援1」の違いは
・手助けの必要性の程度

どちらも福祉器具として歩行器が貸与されることもあります。*要支援は「要介護になる恐れがある状態にある」もの。

また、要支援1でも、ホームヘルパーさんが介護予防訪問介護として掃除や調理のために家庭訪問してくれます。

予防の意味もあるので、要支援1の人は生活にあまり支障がない人もいるのですが、やはりちょっと助けが必要でなんですね。

・・・一人暮らしの男性なら「歓迎!」ということもあるかも。でも女性はできれば家に他人を入れたくない気持ちもあります。気を使いますよね。

 

さて、要介護1、要支援1,2の状態は、ふつうの感覚で自立といえるでしょうか。

ヘルパーさんに来てもらう必要があったらもう自立とはいえないような。また認知症が出て来ても自立でしょうか。

専門家の判断による「自立」の範囲なので、排泄・食事をほとんど一人でできる要介護1までがやはり自立、そして介護保険の支出も少ないかと思います。

でも、自分のこととして考えたら、知りたいのは要支援1ならないでいられる期間。

 

 

2まったく介護保険のお世話にならず、自立しているのは何才まで?

さて、要支援状態になって、介護保険の受給者になるのは何歳くらいからでしょう。

1)データ

平成27年度介護給付費実態調査の概況(厚生労働省)によると、

要支援・要介護の人の割合

75~79才
男性9.0%
女性11.6%

80歳前はまだ1割程度。9割の人は自立しています。

80才~84才

男性17.9%
女性27.3%

80代前半は男性は平均寿命が終わるころ。生きている方のうち要支援・要介護の人は5人に1人以下。

女性は4人に一人が要支援・要介護です。

85才~89才

男性32.5%
女性48.8%

80代後半では、男性の3人に一人、女性の約半数が要支援・要介護になっています。

 

↓黒い折れ線が、要支援・要介護者の割合です。

 

2)介護保険から「自立」している年齢は?

79才までは、90%前後の人が、要支援・要介護にならず自立して生活できています。

84才まで、男性の80%強、女性の70%強が要支援・要介護にならず自立しています。*すでに亡くなっている方もいます。

 

要支援になっていなければ、若い時のようにはいかなくても、まだまだ自分の好きなことをやることができます。

70%~80%人が介護保険のお世話にならずにすんでいる84才くらいまでが私たちの健康寿命のイメージに合っているかもしれませんね。

運がよければ80代後半まで(女性は確率は五分五分です)大丈夫かもしれません。

 

終わりに

健康寿命の短さは日本だけの問題ではなく、世界の多くの国で平均寿命と健康寿命には10年ほどの差があります。介護保険のお世話にならず自立していても、病院通いは増えてくるんですね。

国としてみると、医療費負担が大問題です。特に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年以降は、どうなるでしょう。

個人としても、日常の生活動作が自立しているのはもちろん、できるだけ長く健康でいたいです。

若い方は今のままで大丈夫。

でも、60歳を過ぎたら、病気の発症率がぐんと上がります。50代後半くらいから、栄養・運動・休養に意識を向けていきましょう。・『究極の疲れないカラダ』!簡単すぎ、でも効果あり

人並みに84才位まで、できれば自分の寿命の直前まで要支援にならないで元気に生きていきたいですね。