今度のコナン「から紅の恋歌」は、百人一首を「用いた」ミステリー。百人一首の歌が謎解きのヒントになっていくようですね。
悲恋の歌もたくさんある百人一首。
ここでは「忍ぶれど」から「われても末に」まで、これまで特報や予告などに出てきた「から紅」の和歌の意味をまとめました。
「から紅」
神代(かみよ)もきかず
龍田川(たつたがわ)
唐紅に 水くくるとは
ー在原業平ー
神々の時代の昔にも聞いたことがない。龍田川が(もみじで)川を深く鮮やかな赤い色に染めてしまうとは。
*唐紅(からくれない):深紅
作者は、平安時代の歌人、在原業平(ありわらのなりひら)。奔放で恋多き美男。「伊勢物語」を書きました。
百人一首ってそもそも?
・・・百人一首は、12世紀初め、藤原定家がそれまでに詠まれた優れた和歌を100集めたもの。
飛鳥時代から奈良・平安・鎌倉時代の初めまでの和歌です。
特報では
忍ぶれど…
映画「純黒」の最後に出てきた服部平次のセリフ「忍ぶれどっちゅうわけか」。この歌はポスタービジュアルにも登場しました。
忍ぶれど
色に出にけりわが恋は
ものや思ふと人の問うまで
ー平兼盛ー
*映画では、和葉が「かるた」の得意札にしましたね。自分の気持ちを表しているからって…。
両想いなのに知らない和葉。ちょっとせつない。
✔遠回しな告白が効果的?
「忍ぶれど」は歌合せ(歌会)で詠まれた歌ですが、好きな女性に贈る歌という想定。
ストレートに「あなたのことを想っています」と言うのではなく、「私が恋をしていることがまわりの人間にもわかってしまったんですよ」と言うことで「、私はこんなにあなたのことを想っています」と婉曲に伝えています。確かに、お付き合いし始めの人から「会いたいです」とメールをもらうのも嬉しいですが、「ふと空を見上げたら星がいっぱいで、あなたにも見せてあげたいと思いました」と書いてあったら、ときめきますよね。
ただ、まだ仲良しのままの和葉に、告白していない平次がこんな遠回しに言っても、きっと通じませんね^^
昔は多夫多妻!和歌で求愛
平安時代前期ころまでの結婚は、男性が好きな女性のもとに通う「妻問婚」。
女性は生家を出ることはなく、生まれた子供もそのまま母親が自分の生家で育てました。
新しく恋をしたらその女性のもとに通うので、男性にとっては何人もの女性との間に子どもがいて、女性にとっては何人もの父親の違う子どもがいることがあったんですね。
この恋のメッセンジャーが和歌。
何度も和歌のやり取りをしてお互いの気持ちを探り、確認しながら相手を受け入れました。
*男性の家で子どもを育てるようになったのは11世紀ころからのようです。昔のことなのではっきりしません。
ポスターでは
【ポスタービジュアル解禁】
ついに、ポスタービジュアルが解禁!!!
それぞれの想いが交錯する淡い「恋」のストーリー、“百人一首”を用いた難関「ミステリー」にご注目ください! #conan_movie pic.twitter.com/mUeJC79Iup— 劇場版名探偵コナン【公式】 (@conan_movie) 2017年1月18日
ポスターの中にある3枚の札。和歌が書かれています。
その意味は…
1くもかくれにしよはのつきかな
めぐりあひて
見しやそれともわかぬ間に
雲がくれにし夜半の月かな
ー紫式部ー
幼友達に久しぶりに出会ったけど、すぐ帰ってしまった。あなたなのかどうかもわからぬくらい短い間で、まるで雲の間にすっと隠れてしまう月のように。
ポスターの蘭の顔が切ない!彼氏の新一はいつも雲隠れ…。
2ものやおもふと人のとふまで
これは「忍ぶれど」の下の句です。
3しのふることのよわりもそする
玉の緒よ
絶えなば絶えね
ながらへば
しのぶることの弱りもぞする
ー式氏内親王ー
私の命よ。絶えるなら絶えてしまえ。生きながらえたら、この恋を心に秘めていることができなくなってしまうかもしれないから。
*玉の緒:宝石などの玉を通しているひも。魂を身体につなぐものという意味も持っています。
作者の式氏内親王は後白河天皇の娘。
百人一首を編纂した藤原定家の恋人だったと考えられています。
予告!「割れても末に」
一番新しい予報がこれ。
瀬を早み
岩にせかるる滝川の
割れても末に逢わむとぞ思ふ
ー崇徳院ー
「瀬」は流れが速いので、岩にあたった流れはせき止められて二つに別れてしまう。
でも後ではまた一つの流れになるのだから、私とあの方もいずれはまた逢うことができると思っています。
↓流れの早い「瀬」
By Akiyoshi’s Room (Own work) [GFDL or CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
新一と蘭の恋のようです。
でも、実際にはこの歌は「この世では結ばれないけれども、あの世で結ばれる」という悲恋のうた。新一がよむには不吉すぎます!
ふたたびの出会いを待っているのは新一や蘭ではなくて、映画の中の犯人やその恋人のことなのかもしれませんね。
*映画では、これが新一から蘭へのメールに使われました!
新一は「あの世で結ばれる」という意味では使いませんでした^^
新一、出てこなくてがっかりでした。
新一と蘭は長い目で見れば、この世では結ばれない悲恋ではありません。
もし新一に戻れなくても、コナン君はだんだん成長して、どんどん新一らしくなりますから、そのうち蘭も気づいて、10才の年の差ながらハッピーエンドでゴールインしますよね。
知り合いの中にも、女性が7歳くらい年上で幸せに結婚している夫婦が三組います。
大人になったら子供の時のように身長も違わないし!
✔怨霊になった崇徳院!?
「瀬を早み」を詠んだ崇徳院は波乱の人生を送った人。平安時代後期(12世紀)の天皇、上皇でしたが、怨霊になったとされているんです。
平安時代は名前の「平安」とは違って貴族や僧侶、武士たちの権謀術数が渦まく時代。
崇徳院は3歳で天皇になり、鳥羽上皇の院政のもと実権はもたぬままでした。そして鳥羽上皇の死後は、保元の乱で後白河上皇と対立することになり負けて讃岐に流され、そこで亡くなりました。
恨みは深く、「日本国の大魔縁」となって国を混乱させてやると血書したとか、鬼のような様子だったとか怖い話ばかりが残されています。
でも、流される時は最愛のお妃を連れて行けたようですから、「瀬を早み」の歌と違って愛情面では幸せだったかも。
終わりに
人を想う気持ち、恋には人を揺さぶる激しさがあって、特にかなわぬ恋は私たちをひきつけます。
「から紅」では、平次の告白を待つばかりだった平次と和葉の恋も危機に陥りそうです。
サンデーでは新シリーズに「剣士」が登場する見込み。←平次、沖田総司くんでした。